愛情以上恋人未満



 ドドド!!

 そんな音がキン肉ハウスの外から聞こえてくる。
 室内で寝転がっていた家主のキン肉マンは跳びあがり、キョロキョロと辺りを見渡す。
「王子、そんなに驚かなくても、あの方達ですよ」
 自国の王子の様子に呆れたふうに溜め息をつきながら、ミートは窓の外を指差す。
「なんじゃ、あいつらか。まったく驚かしよってからに」
「少しは王子もあの二人に見習って、トレーニングしてきたらどうですか?」
「あいつらは、いつもわたしがゆっくり寛いで所を邪魔しにくるのぅ」
「王子は寛ぎすぎなんです!!」
 早く出てあげて下さい! 顔面を巨大化させたミートに怒鳴られて、キン肉マンは外へと出た。
 外に出たキン肉マンが目にした者とは、笑顔を浮かべながらも、軍服の前を開けてバサバサとして扇いでいるブロッケンJr.と、敷地内に足を踏み入れたものの、ゼェゼェと肩で息をしている超人の。超人と言っても半超人なのだけれど。
「クヤシイ…また負けた…」
「あったり前だ。俺がに負けるかよ」
 手加減をされていると分かっても、負けるのが悔しいのか、グッと首を上げてブロッケンJr.を睨みつける
「…のぅ。ミート…」
「王子、言いたい事は分かりますが、これが彼らの恋人同士の認識なんですよ」
 2人の会話を聞いたキン肉マンが首を傾げてミートに尋ねる。
 そう、ブロッケンJr.とは恋人同士…である。傍からはそうは見えないが…。
 半超人のは自分の身と、彼女の周りの人々を守るために、トレーニングを始めた。
 超人オリンピックでキン肉マンを知り、彼の仲間とも親しくなった。
 親しくなったと言うより、より年上の彼らは、が半超人であるという事もあり、妹のように彼女に接していた。彼女もまた、兄を慕うように彼らに接していた。
 ただ、唯一の同い年のブロッケンJr.とは喧嘩をしたり色々と揉め事を起こしていたのだが、つい最近、周りのお膳立て(お節介とも言う)のお陰で恋人同士になったのだった。
 あまり恋人同士には見えないが…と首を傾げるキン肉マンだったが、ブロッケンJr.とが微笑み合っているのを見て、ホッとする。
 今までなかった甘い空気が流れているではないか…。
「ブロッケンは幼い頃からトレーニングしとったんじゃ。つい最近始めたとは違って当然じゃわい」
 恋人同士とは言っても、こうして一緒にトレーニングしながらキン肉ハウスにくる2人にキン肉マンは微笑む。
 慕ってくれるのが嬉しいのである。それは、他の超人にとっても同じ事で、2人が一緒に来ると、笑顔で迎え入れ、一緒にトレーニングをする。
 そんな彼らとキン肉マンが違う所は…。
「キン肉マンも走って、その後スパーリングしよう!」
とじゃ張り合いないだろ。俺としようぜ。キン肉マン!」
「何よ。ブロッケン! 私が最初に言ったのにぃ~」
「なんだよ。お前じゃ張り合いないのは仕方がないだろ?」
 キン肉マンは誘わないと、一緒にトレーニングをしない所だろう。
 一緒にトレーニングする事がめったにないキン肉マンとトレーニングしたくて仕方のないブロッケンJr.とは、こうしてキン肉ハウスまで競争して誘いにくるのだった。
 そして、どちらがキン肉マンとスパーリングをするかでもめるのだった。
「お前たち2人は本当に仲がええのぅ」
「王子、感心してないで行ってきたらどうです?」
「しかしのぅ。ミート…わたしは今日はゆっくり一日を過ごすと決めているんじゃ」
 トレーニング嫌いのキン肉マンは、ブツブツと文句を言う。
 その声は、近くにいるブロッケンJr.も少し離れた所にいるにも聞こえていた。
「おい、キン肉マン、いいじゃねぇ~か、俺たちとスパーリングしようぜ」
「私たちとトレーニングするの嫌?」
 友人達…特にブロッケンJr.とはキン肉マンにとって、弟や妹のような存在。そんな彼らのお願いをキン肉マンは断れるはずがなかった。
「う…うむ…仕方がないのぅ」
「よっしゃ!」
「やったぁ!」
「まったく…こんな時でもないとトレーニングなんてしないじゃないですか。ブロッケンJr.さん、さん、よろしくお願いします」
 観念したように言うキン肉マンに、ブロッケンJr.とは笑顔で喜び合う。
 そんな2人にミートは頭を下げる。
「ミートも一緒に行こうよ~」
「ボクも…ですか?」
「少しはマシになったから、ミートにも見てほしいんだ」
 の頑張りようをミートは知っている。『マシになった』程度以上の事が出来るようになっていた。
 それはそうだろう。キン肉マンを始め、実力のある超人に見てもらうという、誰もが羨ましがる程の超人達からトレーニングを受けているのである。
「わかりました」
「それじゃ、ブロッケン、キン肉マン、競争!! 遅かった人が奢りねぇ~」
「おい、待て。先に出るな」
「そうじゃぞ。ズルはイカン」
「私の方がブロッケンやキン肉マンよりトレーニングするのが遅かったんだから、当然でしょ~!」
 先に出るために少し離れた所に立っていたは駆けだし、笑顔で叫ぶ。
「行くぜ、キン肉マン、アイツ俺に負けたのかなり悔しがっているからな」
「しょうがないのぅ。しかし、お前たちの愛情表現は面白いのぅ。見ていて厭きんわい」
「な…何言ってんだよ!? おら、行くぜ!」
 軍帽をかぶっているのでよくは見えないが、おそらく顔を赤くしているだろうブロッケンJr.も駆けだし、キン肉ハウスの前にはガハハハと笑うキン肉マンが残っていた。
「王子もいつまでも笑っていないで、走らなければ負けますよ」
「おぉ! そうじゃった。それじゃミートも後からくるんじゃぞ!」
「はい」
 ミートの返事を聞いたキン肉マンも、駆けだす。
 3人の後ろ姿を見つめながら、ミートも歩き出す。のトレーニングの成果を楽しみにしながら。




え…え~とですね…。
Jr.と恋人同士なんだってみんな知っているんだよ~
って事を書きたかったようです?(聞くな)
Jr.とさんは同い年で、みんなにお節介やかれてくっついたら面白いなぁ~と思ったの。