愛しい人
声にならなかった。いや、声が出なかった。
目の前が真っ白になっていく。
爆発の光だけではなく、思考回路全てが現実を拒否しているかのように…。
目の前にいるとは思わなかった。守ってくれるなんて思っていなかったのだ。
「ピッ…コロ…?」
あの時と一緒だ…とは思った。彼が悟飯を助けた時と同じ悪夢がそこにある。
夢ではないのに、夢と思いたい。これは悪夢だと…。
「ほんとに…ダメな…ヤツだ…」
言葉は悪かったが、顔は笑っていた。
「…生きろ…」
「ピッコロ!?」
「お前は…生きろ…」
「ピッコロ!!」
を庇った翠の体を気弾が付き抜ける。力が抜けたその体は地面へと落ちるが、の手が落下を防ぐ。
最後に見たのは彼の笑顔。
どうして彼が死ななくてはいけない…?
本当は自分がその気弾を受けるはずだったのに…。
「ピッコロ…大好きだよ…」
今まで言えなかった言葉を口にする。
そして、ニタニタと笑っている人造人間に跳びかかる。
最後に残ったのは、言葉と笑顔。
それから、愛しい気持ち。
「…愛してるよ。ピッコロ…」
傷ついた心はまだ癒えない。癒すつもりなどない。
成長を止めてしまった体だったが、白くなってもなお伸びる髪の毛が、月日を思い起こさせる。
「待っててねピッコロ。仇は討つからね」
彼の着ていた道着と同じものを着て立ち上がる。何度目かになる人造人間との戦い。
「さん。行きましょう」
悟飯が悟空と同じ道着をして顔を出す。それは、も以前着ていた服と一緒だったが、悟飯の目には父親しか映っていないだろう。
それはも同じ事。今まで着ていた道着を捨て、彼を想って着る。
「トランクスは?」
「今、用意しています」
は悟飯とトランクスと一緒に修行をする。
もっと強くなる為に。人造人間を倒す為に。
愛しい人を心の中で想い描いて…。
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未来ヲ望ム為ノ方法 のさんでした。
どっちっかって言ったら、未来編が好きだったのかも知れない。
ピッコロさん出てないのに…(涙)
終