桜と彼と彼女と



 ウォーズマンは走っていた。
 トレーニングの為というよりも、空いた時間をうめる為にランニングをしていると言った方が正しいかも知れない。
 走っていると、何か小さいものがウォーズマンの目の前を落ちて行く。
 集中していると感じないその小さな物は、ヒラヒラと舞い落る。
「あ、ウォーズマンだ~」
 少し離れた所から聞き覚えのある弾んだ声が聞こえ、ゆっくりと足を止める。
…?」
 ブンブンと手を振ってウォーズマンの方へ駆けてくるその人は、初めて自分に会った時と変わらない笑顔だった。
 走っている時とはまた違った鼓動の高鳴りをウォーズマンは感じたが、それは決して嫌なものではなく、むしろ心地の良い感じだった。


 キン肉マンの知り合いだと紹介された彼女は、ウォーズマンを見上げて驚いた表情をしたのだ。
 怖がられていると思ったウォーズマンだったが、そうではなかった。
『私より背が高ぁ~い!!』
 そう言って喜んでいたのを、覚えている。
『わたしだってより高いではないか』
『キン肉マンより、ウォーズマンの方が高いじゃない。隣に立っても私が小さく見えるぅ~』
 少し拗ねた風にいうキン肉マンにも、笑顔では答えていた。
 超人と一緒にいるとそうでもないのだが、人間の女性としては長身の類に入るは、背の高さにコンプレックスを抱いていた。その為か、超人と並んで立つ事をとても喜んでいた。
『私、って言います』
 キン肉マンと言い合っていたは、ウォーズマンの方を見て微笑んだ。
 そんなの反応に、戸惑いながらも喜んでいる自分に、ウォーズマンは驚いていた。
 今までそんな風に言われた事はなかったから。怖がられるか、遠巻きから見られるかぐらいしかなかったから。
 それからかも知れない。彼女と話をするたびに、楽しいと感じるようになったのは…。彼女に会える日を楽しみにしているのは。


 自分の方へ駆けてくるに、ウォーズマンも急ぐように少しスピードを上げる。
「ウォーズマン、ランニング?」
「ああ。少し走ってきたんだ」
「そっかぁ。呼び止めてごめんね」
「いや。休憩しようと思っていたから」
「ほら、ウォーズマン見て、桜」
「さくら?」
「そう。もう春だねぇ~」
 ヒラヒラと舞い落ちる花びら。
 手のひらを向けて、落ちてくる花びらを取ろうとするをウォーズマンは見つめる。
「…綺麗だな」
「うん! 綺麗だね!」
 呟きが聞こえたのか、はウォーズマンの方を見て微笑む。
 その笑みに、ウォーズマンは見惚れてしまう。
 桜も綺麗だが、嬉しそうにその桜に手をのばす彼女も綺麗だ。
 そう思ったウォーズマンだった。 




な…なんじゃこれ…。
『淡い初恋』みたいな感じにしたかったの。
無理だったの。