ーナオシとの出会い編ー01

オーバーチュアが縁を結ぶ

さん!?」
 知り合いなど殆ど居ない新天地であるシンオウ地方で名前を呼ばれ、彼女は振り返った。
「……あ、サトシ君。ピカチュウ」
 そこに居たはがポケスロンの常勝トレーナーへとなっていた頃のジョウト地方で何度か遭遇し行動を共にしたことがある少年とその相棒ピカチュウであった。
「お久し振りです! どうしてシンオウ地方に!? ポケスロンはどうしたんですか!?」
「あ、うん。色々あってね。今はもうしてないよ。サトシ君はポケモンマスターを目指してここに?」
「はい! ジムに片っ端から挑戦してます!」
 君らしいね、と笑ったはサトシとピカチュウしか居ないので、「タケシ君は?」と尋ねていた。
「タケシは今、買い出し中で。俺とピカチュウはそういうの苦手だからココで待ってたんです」
 照れくさそうに笑ったサトシに相棒も似た様な表情で鳴く。変わらない彼らにもつられて微笑んでしまう。この少年が持つ裏表の無い屈託さがそうさせるのだろう。
さんはこれからどこに行くんですか? あっ、バッジは幾つ持ってるんですか? 今の手持ちポケモンは!? オレとバトルしてくれますか!?」
 思い出したかの様な怒濤のそれに苦笑いを浮かべたは、「落ち着こうね、サトシ君」宥めに入るも答えて行く。
「ここで開催されるポケモンコンテストを観に来たんだ。それからバッジは七個持ってるよ。手持ちに関しては秘密。サトシ君とのバトルはする機会に恵まれたらね」
 シンオウ地方が発祥の地であるポケモンコンテスト。これに参加する者達は、『ポケモンコーディネーター』もしくは、『コーディネーター』と呼ばれポケモントレーナー、ポケスロントレーナーとはまた違う位置にある。
「七個!? しかも手持ちは秘密でオレとのバトルは機会があったらかぁ……。いつその機会は巡って来るんだろう、はぁ……。ああ!! そうだ、さん!」
 落ち込んだかと思えば直ぐにもとの元気を取戻したサトシはこう言った。
「今日のコンテストはオレの知り合いが出るんです! 二人ぐらい!」
 サトシの知り合いにまさかコーディネーターがいるとは思わなかったは目を丸くして、どんな人なのかを尋ねる。すると少年は意気揚々と答えてくれた。
「一人はオレと同じ位の女の子で、ヒカリって言います。もう一人はさんより少し年上に……なるのかな、ナオシさんっていう男の人です」
 そういえばサトシはタケシと必ずもう一人、女の子を合わせた三人で旅をしていた。ヒカリという子はきっとシンオウ地方で出会い共に旅をしている仲間なのだろうと、は直ぐに検討がついたのだが……
「ナオシさんっていう男の人は、どんな人?」
「ナオシさんはコーディネーターでもありポケモントレーナーでもある吟遊詩人なんです!」
 と同じく、何やら多くの肩書きを持つ人物であることは解った。しかしが聞きたかったのはそうではない。
「そのナオシさんっていう方の外見は?」
「えっと〜…………あ! あの人です、あそこの木陰に座ってる人です!」
 考え込んでいたサトシが突然に顔を向けた方をも見れば……黒い長髪に深緑色の尖り帽とマントに金色の竪琴を持った成年が目を閉じて座っていた。
「サトシー! お待たせぇ〜!」
 別方向から少年を呼ぶ声が聞こえも呼ばれた本人も直ぐにそちらへ半身を返してた。
「ヒカリ、タケシ! 遅いじゃないか」
「ピカピー!」
「ゴメン……って、あれ? サトシ誰、その人?」
さん!? お久し振りですね!」
 きょとんとするヒカリに答えたのはタケシだ。そのタケシに軽く手を振ったは、
「サトシ君。私はこれで。コンテストが始まる前にやらないとイケナイことがあるから」
 引き止めるサトシとタケシの声に申し訳なさそうな顔で答えると、は雑踏に紛れたのだった。