ポケモン 始まりの話

「優勝はチーム・!!」
 ポケスロンドームに響く初勝利の宣告を彼女――は幻聴かと思った。
 鳴り響く拍手と興奮冷めやらぬ歓声がポケモン達から自分に向けられても、唖然とするばかりで。
 実感が湧かないというのは実にこういうことを言うのだと、初めて体感したあの日を……今でもは忘れていない。

 訳あって出発したポケモントレーナー修行の傍らに出会ったポケスロに初挑戦してから一年半。
 勝ち星にも運にも見放され苦難の日々がとポケモン達にあった。
 初心であったにも関わらず、とポケモン達は割とトントン拍子でジム戦を勝ち進んできたことが、無自覚な自信と慢心に繋がっていたのかもしれない。
 無論ポケスロンを甘く見ていた訳ではないが……達は余りにもポケスロンの勝利から遠のき過ぎていた。
 一時期はジム戦と様々な調査が優先されたためポケスロンから離れ、ポケモンバトルに比重が傾いていた時もあった。
 そうこうしている内にバッジを八つ集めてジョウトリーグへの出場権を獲得するも、調査のため参加することはなかった。
 調査が一段落ついた頃にポケスロンドームで大会があると知り、一年振りに出場した。勘を取戻す、という程のものはにもポケモン達にも無かった。
 ……ただ楽しく全力でやろう、それだけだった。
 それが長い間、白星から嫌われていた達に初勝利をもたらしたのかも知れない。はたまたジム戦の成果だったのかも知れない。
 そんな信じられない初勝利であった。 

 ―――あれから数年。は十代から二十代になっていた―――

「勝者チーム・!」
 ポケスロンで殆ど勝てなかったとポケモン達はもう居ない。
 最早はどんなポケモンの組み合わせでも出場すれば優勝、常勝と言われる程の、名ポケスロントレーナーへと変貌していた。
 ポケスロンドームの地下には、「モデル」と呼ばれるシューズやジャージが飾られる程である。
「おめでとうございます! 会場の皆様に一言お願いします!」
「これからも優勝できるように努力したいと思いますので、ご声援、宜しくお願います」
 観客席からは拍手と歓声が飛び、対戦相手たちは顔が真っ青になるという光景は日常化していた。
 ――そう、がジョウト地方に居る限りは続いていたかもしれない。
 には二卵性双子の弟がいた。弟はオーキド博士から一目おかれる天才科学者でタカミズという。
 その彼から新たな調査依頼が舞い込んだ。
 とタカミズから貰ったヒノアラシを育て現在はバクフーンにまで成長した相棒は、忽然とポケスロンから姿を消した。

一つが終り、新たな旅が始まる。


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