未来ヲ望ム為ノ方法 01話


 貴方にもう一度出逢う為、私はここに来たの。
 貴方を亡くすのはもう…堪えられないから…。




 壊れた建物。外に出れない人々は、シェルターの中で暮らしている。
 人造人間からの攻撃を避ける為…。
 かつて、西の都一と呼ばれていた、カプセルコーポレーションは見る影も無くし、壊れた建物の下にシェルターを作り、そこに暮らしている人がいる。
「ん~。とうとう、今日なんだ」
 シェルターから外に出てきたのは女性。外に出ると、グンと伸びをし、腰まである長い白髪を紫と緑と白の紐で編んだもので器用に後ろに一つにまとめると、笑顔でシェルターから出てくる人物に叫ぶ。
「トランクス! 用意は済んだ!?」
さん、良いですか? くれぐれも分からない用にして下さいね」
「アハハ。そりゃ無理よトランクス。はピッコロに会う事に必死なんだから」
「ねぇ、ブルマ。ピッコロは私だってわかるかな?」
「どうだろ? あんた、姿は変わらないけど、髪はずいぶん伸びたからね~」
「母さん、さん、そんな暢気な事を話している場合じゃないでしょ」
 トランクスと呼ばれた青年は、呆れた風にガックリと肩を落として呟く。
 彼の様子に、彼の母親のブルマと、無理矢理変えられてしまった体の為に髪の毛以外の成長が止まってしまったは笑い合う。
 そんな二人にトランクスは溜め息をついた。見た目は歳を老いた自分の母親と、自分よりも少し年上に見えるだったが、実際は、母親より三歳ほど下なだけ。
 この人造人間との戦いで、大事な人を亡くしたは、それ以降、成長が止まってしまった。と母親から聞いた。そんな事が有り得るのだろうか…と不思議に思うトランクスだが、思い出す記憶の中のは、いつもこの姿で、髪の毛だけが伸びていた。
 それに、いつもブルマやトランクスの前では、笑顔を絶やさないだったが、一人になった時、鳴咽を抑えて泣いていたの心からの笑顔を見ると、余りきつくは言えないトランクスだった。
 タイムマシンを作ったブルマは二人乗り用のそりを見上げて、満足気に微笑む。
「本当は歴史は変えちゃいけないんだけど、こんな歴史はあたしらで充分よね」
「いつも悟空に頼ってばかりだ…」
「バカね、。孫くんがいるから、皆が戦えるのよ。それに、あの戦い好きのサイヤ人どもが死ぬのが近いって聞いて、平気でいられる訳ないじゃない」
 サイヤ人で、夫であるベジータを思い出したのか、ブルマはクスクスと笑う。
「戦闘好きと言ったらピッコロも一緒?」
「まぁ、ピッコロも戦闘タイプだけど、あの人はどちらかと言うと、鍛える方が好きかも」
「言えてる~! あんたも悟飯くんも鍛えられたもんね~!」
さん、母さん、行きますよ」
 思い出話に花が咲いている二人に言うと、トランクスは先にタイムマシンに乗り込む。
 もブルマも笑顔を消すと、お互いに手を出して、握手をする。
「トランクスをよろしくね」
「大丈夫よ。トランクスは私より強いから。さすが、ブルマとベジータの子よね」
と悟飯くんに鍛えてもらったから当然よ」
「…ブルマも気をつけてね」
「母さん、すみません。一人にして…」
「何言ってんのよ。あたしはシェルターにいるから大丈夫。あんたたちの方こそ気をつけるのよ」
「はい!」
「うん! 行ってくるね!!」
 が乗り込むと、タイムマシンの上部が閉まり、タイムマシンはゆっくりと上昇する。地上で手を振るブルマに、とトランクスも上空から手を振ると、タイムマシンは音もたてずに姿を消した。
「必ず無事に帰ってくるのよ」
 タイムマシンが去った上空をしばらく見つめていたブルマだったが、呟くと、シェルターの中に入って行った。







「トランクス…」
 浮かび上がったタイムマシンの中、地上からは見えないが、それでも手を振り続けているブルマに答えるかのように手を振りながら、は操縦席にいるトランクスに話しかける。
「はい?」
「平和な世の中にしようね」
 ニッコリと微笑んだに、トランクスは頷く。
 ふと顔を上げた透明のガラス越しに映ったの表情は、何かを堪えているかのような表情だった。
さんは…」
「ん?」
「いえ…俺の父さんってどんな人でした?」
 本当は別の事が聞きたかった。だけど、それは聞いてはいけない気がした。彼の母親でさえ、聞いていなかった事に、彼が聞く訳にはいかないとトランクスは思って話を変える。
 それも聞きたかった事なのだから、嘘ではない。
 トランクスの父親のベジータの事は、母親と悟飯とに教えてもらっていた。それでも、父親を物心がつく前に亡くしたトランクスは何度も尋ねて、父親像を膨らませていた。
「ベジータはね~。強かったよ」
「悟空さんも強かったんですよね」
「うん。悟空も強かった。悟空の強さは、ただ強いだけじゃなくて、あの笑顔もあるの」
「笑顔?」
「そう。あの笑顔は反則なんだ。怒っていても、すぐに許しちゃう。戦っていても、楽しんで戦っている」
 外見は若いが、本当は自分の母親と共に生きた人だという事を思いだしたトランクスは、その先が聞けなかった。
 悟飯が人造人間に殺された時、も重傷をおっていた。それでも生きているのは、呪われたこの血のせいだと言う。
 あのとき、一緒に死ねたら…。病院のベッドで目を覚ましたが呟いた言葉に激怒したのは、ブルマだった。
 トランクスは知らなかったが、ブルマは知っていた。『あのとき』がいつだったを…。
 それから、はブルマとトランクスの家に一緒に住む事になった。
 ブルマがタイムマシンを作っているのを聞き、トランクスが過去の悟空に心臓病の薬を渡す時に、も一緒に行く事を決めた。
 今度こそ、大事な人を亡くさないように。
 悟飯と同じ師をもっているは、これまで悟飯任せにしていたトランクスとの修行を自らするようになった。少しでも強く、力が全てとは思わないが、力が無ければ、あの人造人間を消滅させる事は出来ない。
「…さん」
「ん?」
 自分の考えで一杯だったは、トランクスの声にガラス越しに微笑む。
「俺は過去に行って強くなれますか?」
「なれるよ。修行って一人でしても強くなれない。『こいつには負けたくない』っていうライバルがいればどんどん強くなる。」
さんはそんなライバル…」
「いるよ…ライバル。今でも負けっぱなしなんだけどね」
 もう、一生かかっても勝てないけどね。おどけて言うに、トランクスは何も聞けなかった。
 体に重力が掛かったかと思えば、タイムマシンの外の景色は、廃墟のような西の都と同じような荒野だった。ただ、一面の荒野。ここに悟空が帰って来るのだった。
さんはいないんですか?」
「うん。私はナメック星から帰ってきて、みんなと離れたから」
 上空から見えた豆粒のような人影を見て、何気なく尋ねたトランクスだったが、答えを聞くとそれ以上聞けなくなる。
 自身が質問を拒絶する気をまとっていたから。
「……さん?」
「ん? 大丈夫。あの地点にフリーザたちがくるのよね?」
 後部席から出てきた細く長い指が、地上を指し示す。
 それに頷いたトランクスは、着陸する事を伝えると、レバーを握った。




未来のヒロインさんです。
一応、人造人間達の年代・・・のはずです。
っていうか、そのつもりです。

ピッコロさんは出てこないけど、ピッコロさん夢なんです。