未来ヲ望ム為ノ方法 02話



 貴方に逢うのに、こんなに戸惑った事はない。
 貴方に見放された私を、あなたは覚えていてくれているのでしょうか…?




 宇宙船が着地した。
 その形は以前に見た事のあるフリーザの宇宙船。
「あれがフリーザですね?」
「そう」
「悟空さんは間に合いそうにない…」
「トランクス、行こう」
さん!?」
 歩き出したをみて、トランクスも歩き出す。
 一緒に連れてきた部下に地球人を滅ぼすように言っている所に、少し気を膨らませて存在を気付かせる。
 トランクスとフリーザが話している間に部下がに向かって銃を発砲するが、は手で弾き返し、攻撃を仕掛ける。
 やられた仲間を見て、攻撃を仕掛けてくるフリーザの部下達に、トランクスとは次々に倒して行く。
 トランクスは剣で、は素手で。
 そうして残ったのは、フリーザとその父親のコルド。
 は冷静だった。ナメック星で出会った時は恐怖の対象でしかなかったが…。
『今はそんな事は思わない』
 相手の事がわからないほど、力がないのではない。力があるからこそ、相手のパワーがわかるからこそ、自分の方が強いとわかる。
 それほど、人造人間との戦いは激しい。
 目の前でたくさんの人が亡くなった。それと同じような事をこの目の前にいる親子もしてきたのだが…。
 フリーザは気付かない。とナメック星で会っていた事に。
「何がおかしい」
「まさかこの手で貴方をやっつけられるなんて、思って無かったからね。嬉しいの」
 の言葉にフリーザは高笑いをする。
 どんどん気が高まっていくのを感じたが、恐怖は無かった。気を抑えているとトランクスは、フリーザたち親子にとっては何とも感じないのだろう。
 彼らには悟空の事しか頭にない。
 悟空がいればすぐに勝てると感じていただったが、自分がどれほど強くなったのか試したかった。
さん、行きますよ」
「うん」
 トランクスは鞘から刀を抜くと構え、は構えると気を高める。
 遠くから様子を見ている彼らに気付いたが、彼らはには気付かない。
『まるで別人のような気ですね』
 悟飯に言われた事があった。あれはいつだっただろう? 悟飯とトランクスと一緒に修行していた時。本人は気付かないが、の気は彼が亡くなってから変わったらしい。
 トランクスが気を高めると、彼の髪の毛の色が綺麗な金髪へと変化し、遠くで見ている彼らが、息を飲むのがわかる。
 そんな様子に唇の端を少し上げると、は攻撃に出る。
 まずはフリーザ。
 トランクスとに向けて放たれたフリーザの気弾を避けると、はすぐに気を溜めると、フリーザに放つ。
 爆発音と共に、フリーザとコルドはその場を飛んだ。その隙をついて、トランクスがフリーザに斬りかかり、気弾を放ちフリーザを跡形もなく消滅させる。
 息子の死を目の前にしたというのに、動揺もせずにトランクスを自分の息子に…と言うコルドの姿には吐き気を覚えたが、それよりもトランクスの方が苛つきを抑えているのがわかったので、何も言わずに黙ってその様子を見ていた。
 トランクスの剣を手にすると、その剣でトランスに斬りかかる。
 その剣を易々と受けとめたトランクスは唇の端をあげて笑い、コルドに気弾を放つ。
「おのれぇ!!」
さん!!」
 撃たれたコルドは、せめてだけでも…と思ったのか、トランクスよりもの方に気弾を放った。
「はぁ!!」
 コルドから放たれた気弾は、の手のひらで消滅した。
「ま…待て!!」
 言われたのはではなく、コルドの心臓に手を当てているトランクスに対して。
 答えの代わりに、気弾を放ち岩場に叩きつける。
 フリーザ同様、跡形もなく消し去り、その宇宙船も一瞬にして消し去った。その様子を目にした彼らの驚く声が上がった。 
 剣を背中の鞘に収め、息を1つ吐いたトランクスがの方を見ると、は己の手を見つめていた。
「……さん…?」
「…まだ…まだ勝てない…」
さん!!」
 呟くに少し声を荒げたトランクスが言うと、それまで考えていた事を消し去るように首を振り、トランクスに笑顔を見せる。
「さて、悟空が着くまで私はタイムマシンにいるよ。トランクスは話しをしてくるんでしょ」
「…さんはそれで良いのですか?」
「ピッコロに抱きついてもいいならいく」
「…タイムマシンで待っていてください」
 おどけて言うと、溜め息をついて返される。そんなトランクスに笑って肩をポンポンと叩く。
「なんてね。私が行ったら余計な事を言いそうだもん。今は会わない方がいい。悟空にだけ会って帰る」
「わかりました。それじゃ、悟空さんが着いたらきてください」
「了解!」
「これから孫悟空さんを出迎えに行きます!」
 が頷くのを確認したトランクスは様子を見に近づいて来た彼らに向かってそう叫ぶと、と離れるように悟空が乗った宇宙船の到着地まで誘導するように飛ぶ。
 トランクスの父や母、そして師匠である悟飯も彼の方へ飛んで行く。そして、が会いたくて仕方のなかった彼も…。
「あ…。ヤバイ…」
 飛んで行くトランクスの姿を見送っていただったが、呟くとタイムマシンの所まで飛んで行き、隠れるように操縦席の後ろへと座った。
 頬を伝う雫を手のひらで拭う姿を誰にも見られたくなかったから。
 遠巻きに会えた。ずっと想いを寄せているピッコロに。
 それがこんなにも嬉しい事だなんて…。
 冗談めかして言ったが、トランクスに言った言葉は本気だった。
 ピッコロに会えば抱きついて、何もかもを話してしまうかも知れないという思いがにはあった。そして、みんながいなくて辛い思いとかも全部話してしまいそうだったから。
 そんな事をすれば、この時代のトランクスは生まれてこないかも知れない。そんな事はしてはいけない。変えてはいけない歴史を変えようとするのは、人造人間によって壊された未来を守る為。
 必死で乗り越えてきた大切な人の死をここでぶり返す事は出来ない。
 は目を擦りながらも、トランクスの出現に驚いている彼らの気にクスクスと笑う。にとっては懐かしい彼ら。
 だが、彼らにとっては今のは知らない人間なのだ。
 それがおかしく、そして寂しい。
「戸惑っている。戸惑っている」
 トランクスの気を探ると、結婚以前の両親の姿に緊張しているようで、張り詰めた気とオドオドした気が入り混じって伝わってくる。
「ベジータも気にしてるなぁ~。何しろ超サイヤ人になったもんな」
 殺気を含んだベジータの気を感じたは苦笑し、声は聞こえないが、気で様子がわるので、座席に体を預けてながら、気を探って行く。
 すぐに探しあてた気だが、気付かないふりをしていた。気付いてしまうと、飛び出したい衝動に駆られる。
「ピッコロ…」
 トランクスを警戒している気、だがそこに悟飯の気が近づくと、張り詰めながらも穏やかな気になるピッコロの気に、は気持ちを抑える。
 遠目で見れただけでも、気を感じれただけでも満足すると思っていた。
 今まで感じる事がなかったピッコロの気。
 嬉しいはずなのに、何故か悲しくて仕方がなかった。
 悟空が地球につくまで、は乱れる気のまま、涙を零していた。