アデクとの出会い編02

第二話

(タカミズから貰ったイッシュ地方のタウンマップ、アララギ博士にヴァージョンアップして貰ったポケモン図鑑……えっと、ココではライブキャスターを使うんだっけ)
 鞄の中身を一通り確認して忘れ物が無い事をは確認しつつ、ライブキャスターを手首に付けた。
 モンスターボールもマスターボール以外の複数種類全て数十個入れてあるし、技マシン、道具、回復薬、木の実なども充実している。
(ああ、あと、イッシュ地方でのジムバッジケースとトレーナーカードも確認と)
 真新しいバッジケースと、イッシュ地方で有名なアララギ博士がポケモンリーグ本部へ申し出て作り直してくれていた、今現在の写真入りトレーナーカード。
 以前のトレーナーカードの写真は十代のままだった……遠回しの嫌味だろうか。
 カラクサタウンにあるマンションの一室を借りタカミズは自身の研究室としており、はそこから本格的にイッシュ地方へ旅立つことと相成った。
(プラズマ団のゲーチスねぇ……)
 いつもならモンスターボールから連れ出して歩く相棒のバクフーンはボールに入れたままだ。やはりバクフーンはイッシュ地方では珍しく——アララギ博士に聞いた——無闇矢鱈と連れ歩けない。
(ポケモン解放を唱える男か。人相からして手強そうだ)
 渡されたゲーチスという男の写真を鞄へ入れた。
 は旅するトレーナーである前にタカミズ旗下(きか)の調査員だ。プラズマ団に正体が割れ、タカミズを突き止められられる訳にいかぬ。
(さて、最初のジムはこの先にあるサンヨウシティか)
 手始めにそこへ向かおうと決めた。



「トライバッジをどうぞ、さん」
 にトライバッジを渡してくれたのは水タイプの使い手コーンである。
 サンヨウシティのジムリーダーは三つ子の青年達で、炎タイプの使い手、水タイプの使い手、草タイプの使い手が居る。彼らはまだ駆け出しのジムリーダーらしい。
「有難うございます。トライバッジ、頂戴します」
 ちなみに基本ルールとして三人中一人と戦い勝利すればバッジ授与。は三人に勝つ事でバッジ授与に変更して貰い、ポッド、コーン、デントに勝った。
 駆け出しとはいえジムリーダー三人相手にバクフーンとデンリュウの二体での勝利ーー前哨戦にしては幸先が良い。
「次のジムはシッポウシティにあります。どうぞお気をつけて」
「解りました、有難うございます」
 コーンが差し出した手をが握り返した後、炎タイプの使い手ポッド、続いて草タイプ使いのデントとも握手を交わし、サンヨウジムを後にした。
(……シッポウシティねぇ……)
 ポケモンセンターでポケモン達を休ませている間、はタウンマップを見ながら黙考し、ある事を決めた。
(ソウリュウシティに行く)



「ほう。イッシュでフライゴンを使うトレーナーとは中々どうして珍しい」
「例の野垂死に寸前だった野生の凶暴なモノズを保護したのは、そのトレーナーだという。女性だったと聞いた」
 旅をする現行イッシュリーグのチャンピオンであるアデクに話すのは、ソウリュウシティのジムリーダーでドラゴン使いのシャガ。
「女子(おなご)とは……弱っていも凶暴なモノズをどうやって保護したと?」
「モノズにフライゴンのドラゴンクローを手加減して攻撃、気絶させた」
「ふむ。モノズは何にでも噛み付く習性故に人間は易々と手出し出来ぬ」
 アデクは年齢の割りに筋骨隆々な太い腕を組んで友人の端的な回答に頷いた。
「だからドラゴンタイプの弱点であるドラゴンタイプ技をフライゴンに加減して出させ、モノズを気絶させての保護……理に適った的確な判断じゃ。大人しくなるのを待っておったら、モノズが死んでおっただろう」
 些か賭け要素もあったが手加減しても弱点をついた効果抜群のおかげで、弱っていたモノズは一撃で気絶したと考えられる。
 だがよく決断したと賞賛すべき行動だ。フライゴンの手加減に具合によっては、下手をしたらモノズを死なせていた。
「その娘トレーナー、今どこにおるのだシャガ」
「今夜はポケモンセンターに泊まると言っておった。明日に会えるだろう」