ーコーディネーター入門編ー02

第二話

 二日後の朝。コンテスト会場には予想外の観客が集まっていた。
さんとナオシさんがペアを!?」
 サトシ少年の叫び声に、ピカチュウも驚きの声を上げた。
「半ば強引に組んで貰った感じになったけどね。そういえばヒカリちゃんは?」
「ヒカリは今回エントリーしてなくて……もう観客席の方に行っちゃいました」
 タケシも居ないことを考えれば、恐らくは彼も先にそちらへ行ったのだろう。
「コンテストのデビュー戦、応援してますさん! ナオシさんとなら、きっと大丈夫ですから!」
「ピカピー!」
「有難う、サトシ君、ピカチュウ。ナオシさんの足を引っ張らない様に努力するね」
 参加者控え室へと入る前にサトシ少年とピカチュウから激励を頂戴し、ナオシが待つ控え室へと入った。


 コンテストが幕を上げた。初っ端から、実況と解説に期待のペア、ということでナオシとの名が挙げられていた。
「では参りましょうか、さん。大丈夫ですよ」
 ステージ衣装に着替えたナオシ、そしても主催側からドレスを借りて着替えているーー本当はドレスを着たく無かった、とは言えないーーナオシがに手を差し出す。
「私がさんへのセレナーデを奏でます。それに合わせて下さい。そうすればコンビネーション技も上手く行きます。ハーモニーは輝き、観る者を必ずや魅了する事でしょう」
 微笑んだナオシは差し出していた手での手をそっと掴み上げて、起立を促す。
 穏やかで物静かな彼は吟遊詩人という職業柄、一定の距離を保つ事も多く人に自ら触れ様とはしない。
 そんな彼を自発的に他者へ触れさせる動機はコンテストと……なのだろうか。
「練習も最善を尽くしたのですから、私たちのポケモンを信じましょう」
 と異なり、コンテストリボンとジムバッジをも得ているナオシに導かれるまま。
 バトルフィールドへ、二人は立った。
 コンテストバトルはジム戦とは全く趣が違う。ましてやペアでともなれば更に変わってくる……相手をただダウンさせるのがジム戦ならば、コンテストバトルは技を美しく見せて相手ゲージを減らしつつダウンを狙う。
『ただいまより第二試合を行います! 片やナオシ&・ペア! こなたーー』
 実況の声が会場にこだまする。
 歓声と拍手が鳴り響く。スポットライトが妙に眩しくて、会場のボルテージも上がりに上がり体感温度が高くなる。
「………懐かしい感じがします」
さん?」
「昔……これと似た場所に、立っていました……」
 彼女のいう昔とは、ポケスロンという舞台に上がっていた時だ。
 常勝チーム・と場内に届く度、には期待と重圧がかかっていた。それをはね除けてくれたのは、ナオシの言う通りポケモン達だった。
「似た場所、ですか……?」
 疑問に思う箇所を繰り返すナオシに、「忘れて下さい」軽く首を振りバトルフィードへ視線を戻す。
「ナオシさんの言う通りです。ポケモン達を信じて奏でましょう、私達のコンビネーションを」

《なんというコンビネーションでしょうか、ナオシ&・ペア! 他の追随を許しません!》

 ナオシはコロトックを、はその相棒にブラッキーを選択。
 今回のオール・ペア・コンテストバトルに臨んだ。
 一匹狼気質が強過ぎるのブラッキーをナオシのコロトックがサポートする形で炸裂するコンビネーションは、一見するとコンテストに不慣れなとブラッキーの単独行動に映る。が、それを経験豊かなナオシとそのコロトックがコンビネーションプレイにしてみせるのだから、恐ろしい。
 ステージに居ながらブラッキーがたまにを不服そうな顔で振り返る……これは練習中からあったことだ。多分だがブラッキーは何故自分がコンテストにーーしかもの手持ちではないポケモンとペアを組んで出場しなければならないのか、という抗議だと思われる。
 それに悪タイプであるブラッキーにとって虫タイプのコロットクは弱点だ。良い顔はしないだろう。
《決勝進出です! 決勝のステージも楽しみでなりませーん!》